医師不足が叫ばれるようになって久しいもので、今でも医療格差・地域格差という言葉は医療業界を取り巻く環境において一つの重要なワードと言えます。そのような中で、医師を集めるための施策が国、自治体レベルにおいて進められてはいるものの、現状ではそれほど大きな変化が起きているように感じないと答える医師も多く、実態としては"慢性的な医師不足が継続している"と聞きます。
そのような中で、女性医師の支援に関する施策が広まっているとのことで、今では自治体レベルでの推進のみでなく、個別の病院単位で取り組まれることも増えているようです。そこで、今回は女性医師の離職に関する話、そして現在の復帰支援策の状況等について、少しお伝えしたいと思います。
女性医師の需要が増加している、という事実はご存じでしょうか。時代の流れ、変化もあり、多くの女性が"女性医師に診てもらいたい"と希望しているのです。このような動きが昨今ではメディアによっても報じられており、女性専用外来等のキーワードを目にする機会が増えてきております。
事実、女性の患者に対しては女性の医師が対応し、診察するといういわば「女性専用外来」を設置する病院、クリニックはここ数年増え続けています。
年々増加を続ける女性専用外来あるいはレディース外来ですが、このような外来が増えている理由はひとえに「男性に体を見られたり、触られたりするのが嫌、抵抗がある」あるいは「女性医師に診てもらいたい」というものです。心理的な面からも「女性の悩みは男性には分かってもらいづらいのではないか」と懸念されているという話も聞きます。
確かに、身体に関することもそうですが、デリケートな話になってくることの多い婦人科系においては、男性医師に話をしても細かな心理状態を汲んでもらうことが難しいという実態もあるため、今のようなデリケートな世の中では、女性のみを専門とした外来が増加するというのもやむを得ない所でしょう。事実、このような外来等が増えることを支持する女性も多いという実態があるため、増加を続けているのです。
では、女性医師の需要が高まっているであろうことが推察できる中で、離職問題に関してはどうでしょうか。これに関しては、厚労省から出ているデータを元に少し確認をしてみましょう。最新のものですと、2016年(平成28年)のデータがあるのですが、ここでも30代までは女性の医師数が増えているものの、40代以降は非常に高い割合で女性医師が減少していることが分かります。
具体的には30-39歳では20355人となっていたものが、40-49歳では19918人に、50-59歳では10107まで落ち込みます。男性医師では50代まで増加を続けているものが、女性医師では圧倒的に減少しており、高い離職率となっている現状が分かります。
結婚、妊娠、出産といったイベントが増える30代、そして子育てに時間が必要となる40代以降、どうしても女性医師の減少は免れることのできる問題ではありません。女性医師の需要も増加する中、多くの医療機関などが女性医師の復帰支援を支持し始めているのです。
厚労省、自治体、各医療機関が様々な復帰支援策を発表、実施していますが、どの程度の方がうまく活用されているのか、そのデータに関してはそれほど集まってはいないように思います。
現在、具体的に支援されているような施策としては、以下のようなものがあります。
1. 女性医師等就労支援事業
2. 女性医師支援センター事業
3. 病院内保育所事業
それぞれ、ライフステージに合わせた施策であり、具体的な内容は各機関によって若干異なる部分があります。ただ、以前と比較すると、出産後に職場復帰が容易になった、子育て中でも無理のない範囲で出勤可能になったという声も増えており、その成果は除所にではあるものの、出てきているようです。
女性医師は、男性医師と比較すると家庭のこともあるため、どうしても離職率の上昇を防ぐことができません。そのため、現在のように"復帰を支援する施策"が前面に出てきているのでしょう。職場復帰が難しいとされた時代は終わり、復帰が容易な時代の到来は働きたい女性医師にとっては、非常に喜ばしいものと思われます。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |