「ウィメンズヘルス(女性診療)」は産婦人科領域と考える医師が多いかもしれませんが、その多くはプライマリ・ケア領域であり、女性特有の疾患や性差による病態を理解し診療する医療です。産婦人科検診では患者からの質問に答える機会も多いため、ウィメンズヘルスの基本的な知識および診療ができることは大切ですし、どの専門科においてもその知識は強みになります。
産婦人科ではなくても、外来で妊婦さんからお薬の相談があったり、外科領域では術前にピルの休薬指示・指導が必要だったり、めまいやふらつきなどの主訴で更年期による症状との違いに迷った経験がある医師も多いはずです。そんな非専門医に筆者がおすすめしたい本をご紹介します。
井上真智子. プライマリ・ケアでの女性の診かた~女性診療に携わるすべての人に役立つ問診・診察・診療のノウハウ. 羊土社, 2015.
中山明子, 西村真紀. お母さんを診よう プライマリ・ケアのためのエビデンスと経験に基づいた女性診療. 南山堂, 2015.
池田裕美子, 対馬ルリ子. プライマリケア現場での女性診療―押さえておきたい33のポイント. 日本医事新報社, 2016.
いずれも、女性診療の基本が学べる本です。大型書店では置いていることが多いので、手にとって目を通してから、いずれか気に入った一冊を読むとよいでしょう。筆者は1番目の『プライマリ・ケアでの女性の診かた~女性診療に携わるすべての人に役立つ問診・診察・診療のノウハウ』を購入しました。検診で必要な診察器具の違いや使い方も図や写真つきで少し書いてあるので参考になりました。
日本産婦人科学会主催
『女性のヘルスケアアドバイザー養成プログラム』は年5回の通年講座で、検診にも役立つ充実した講座ですが、日本産婦人科学会会員であることが必要です。
日本女性医学学会主催
学術集会および年に1回のワークショップがあります。非会員も参加可能です。
日本母性内科学会主催
『母性内科プロバイダーコースbasic』、『プロバイダーコース』が2018年より開催されました。
3番目に関しては、入会する条件は特に記載されていませんが、プロバイダー資格を取得できるのは母性内科診療の分野に限定されており、規約には、『母性内科診療の各分野とは、A内科(1総合内科、2代謝・内分泌、3腎・高血圧、 4循環器、5血液、6神経、7呼吸器、8消化器、9膠原病、10感染症、B)産婦人科 を指す。今後の各分野の発展によっては新たな分野の設置も検討する。』と書かれています。
ここには外科領域が含まれていませんが、今後、対象は拡張される可能性がある文言なので、外科が専門で受講したい人でも、学会に交渉してみる余地はありそうです(この規約だと、例えば、外科認定医を持っている乳腺外科専門医の人は受講できないことになりますよね)。
筆者の外来にも、先日、術前なのに性感染症疑いとなった患者が来て対応に時間がかかってしまいましたが、どの科においても「ウィメンズヘルス(女性診療)」の知識は必要だと実感しました。「ウィメンズヘルス(女性診療)」は、通常の診察室で実践可能ですので、ぜひ、機会があればここで挙げた勉強会に足を運んでみてください。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |