今の職場を辞めたくなったことがありますか?薬剤師はそのキャリアの中で3回転職すると言われるほど、転職の多い職業です。
転職する理由は人それぞれです。しかし、理由をまとめてみるとだいたい次の3つに絞られます。まず、人間関係、次にキャリアアップ、そして最後が職場環境です。 薬剤師を悩ます3つの転職理由とは具体的にはどのようなものなのか、見ていきましょう。
転職理由で一番多いとも言われるのが、人間関係です。女性に多いとも言われます。上司や部下、同僚とは毎日8時間以上接するため、一旦関係がこじれてしまうと出勤自体がストレスになります。とはいえ、人間関係が良くないといっても原因は様々で、根本的な理由を考えてみる必要があります。
たとえば、どんな人でも極端に忙しければ、当然イライラします。人間関係が良くない原因は、人手不足や仕事の偏りにあるのかもしれません。上司とのそりが合わない場合にしても、上司の性格が問題なのか、その上司が慣れないポジションで苦労していたり、経営陣からのプレッシャーで自分を見失っていたりすることが原因かもしれないのです。
職場の種類によっても人間関係の悩みは変わります。たとえば、調剤薬局の場合は、狭い職場で1日中顔を突き合わせているため、薬剤師同士の関係に悩む人が多くなります。一方、ドラッグストアの場合は、店長や他の薬剤師、パートや派遣、お客など様々な人とコミュニケーションをとる必要があり、人間関係がより複雑です。
病院の場合は、薬剤師同士だけでなく、医師や看護師、事務方との関係も悩みの原因になります。
転職して職場を変われば当然人間関係も変わりますが、新しい職場がやはり多忙だったり、経営陣からのプレッシャーが強かったり、慣れない人が管理職についていたりすると、結局同じ悩みを抱えてしまうことになります。ですから、人間関係を理由に転職する場合、まずその原因をしっかりと知ること。そして、いざ転職する際には、転職エージェントに人間関係の良いところを探してもらったり、上司や店長の性格を教えてもらったりするなど、なるべく詳しい情報を取ることが大切です。
さらに、転職先候補の職場をいくつか見学して、比較しながら実際の雰囲気をなるべく具体的に知ることです。入社を決める前に体験入社として、何時間か働かせてもらうことができるところもあります。体験入社でわかることには限りがありますが、いきなりとびこむよりはずっと安心できます。
キャリアアップを理由に転職する人もたくさんいます。しかし、ひとことでキャリアアップといっても、求めているものは人それぞれ違います。キャリアップという聞こえの良い言葉に自分を納得させて、本当の理由を見えなくしていることさえあるのです。
たとえば、給与に不満があるのか、専門的な知識を増やしたいのか、それとも管理薬剤師に昇進したいのか、マネジメントや人材育成がやりたいのかなど、目的をはっきりとさせることから始めてみましょう。目的によって、目指す転職先も変わるからです。
仮に、給与を重視すると決めたとしましょう。一般的には、病院よりもドラッグストアの方が給与は高いので、ドラッグストアを転職先に選ぶとします。しかし、ドラッグストアでも大手と中堅では当然待遇は違います。そして、営利を目的にしているため、給与が高い分、業績達成へのプレッシャーも強くなります。さらに、ドラッグストアは弁当や日用品・お菓子も取り扱っているため、仕入れ、品出し、レジ打ち、顧客対応といった薬剤とは無関係な仕事が多いことも念頭に置いておく必要があります。
もし、薬剤に関する知識をもっと増やしたいのであれば、病院のそばの調剤薬局がオススメです。調剤薬局は、街のドラッグストアよりも取り扱う薬の種類が多いので、薬剤に関する知識が広がります。さらに、患者さんとの接点もあるので、患者さんと人間関係を作りたい人にも向いています。
管理薬剤師を目指す人の場合ですが、管理薬剤師になるのに特に資格は必要ありません。一般的には、調剤薬局やドラッグストアで3年以上の実務経験を積み、一通りのルーティン業務をこなせる実務能力、後輩の指導や育成の経験といったものがあれば、昇進できる可能性があります。その他、薬事法や保健医療についての知識を増やしたり、コミュニケーション能力や管理能力を磨くのもプラスになります。
在宅医療に興味があるのであれば、地域密着で在宅に力を入れている調剤薬局に転職するのがよいでしょう。このように、自分が何を優先しているのか、まずはっきりとさせて、その目標に沿った職場選びをすることが大切なのです。
3つ目の転職理由、職場環境も人間関係やキャリアアップと同じように、具体的な中身は様々です。 たとえば、仕事の量が多すぎる、忙しすぎるという問題に悩んでいるとします。この場合は、転職するのでなく、上司や責任者に掛け合って、人手を増やしてもらったり、仕事の割り振り・やり方を変えてもらったりすることで改善する可能性があります。
次に、組織が問題という場合もあります。組織が大きすぎると自分が機械の歯車のように感じてやる気がでなかったり、達成感がなかったりします。逆に組織が小さすぎても、職場が硬直していることや、気を使うことが多くストレスを感じてしまうことがあります。さらに、目標にできるロールモデルとなる先輩や尊敬できる上司がいないなど、将来に不安を感じてしまう組織もあります。
大手のドラッグストアチェーンの場合、転勤・転属で勤務時間や出勤・通勤時間が変わり、勤務が辛くなることもあります。また小規模の調剤薬局では、転勤はありませんが調剤機器がデジタル化されておらず、やりにくいというケースもあります。
自分の環境の変化、たとえば、ライフイベントや体力的・時間的な理由で職場環境が合わなくなることもあります。よくあるのは、出産・子育て、介護、配偶者の仕事の変化で、働ける時間が短くなるケースです。この場合、育児休業や介護休業、短縮勤務など制度がしっかりしていれば、転職する必要はないのですが、小さな職場であれば、他の人との関係がギクシャクして、プレッシャーを感じていづらいことも多いようです。
中高年になると年齢的に立ちっぱなし、動きっぱなしという業務が体力的にきつくなります。この場合は、パート勤務に転換して働く日数や時間を調節することも選択肢の一つです。 さらに、女性が多い職場なので、男性が浮いてしまったり、産休や育休の人のしわ寄せがきて仕事がきつくなった、といったケースもあります。
その他、機械的な作業が多い。患者さんに寄り添う機会がない、出会いがないなど様々な理由がありますが、働きがいを感じない職場環境であれば、転職を考えることは自然なことです。
職場環境を理由に転職する場合、まず自分にとって絶対はずせない条件をはっきりとさせて、その条件を満たしてくれる職場を選ぶようにすることです。 転職エージェントに相談するなど、今の職場で働きながら希望に合う求人が出るのを待つゆとりが必要でしょう。
薬剤師の転職理由は、人間関係、キャリアアップ、職場環境が3大理由と言われます。 とはいえ、その中身は個人個人で様々ですから、転職する場合は、まず自分の悩みをはっきりさせ、それを解消してくれる職場をしっかり吟味して選ぶことが大切です。転職経験者や転職エージェントに相談するなどして、じっくり進めましょう。**