女医の数は年々増加しており、近年の傾向では国家試験合格者の女性の割合は3割程度にまで上昇しています。ここでは、大学病院・民間病院・開業それぞれの女性医師が歩むキャリアの道についてお伝えします。
大学病院に女性が属するメリットは、なんといっても大きな組織に守られているという安定・安心感が得られることです。結婚・出産などで医療現場を数年離れても大学病院の医局に属している限り、就職活動を行わずに大学病院や大学病院関連施設に復帰できます。
また、託児所を使用できることや、人員が多いため、子どもが熱を出すなど急な休みが必要なときでも比較的融通がきくのは良い点です。さらに、最先端の医療に身を置くことができ、学会や研究など学術的なことも臨床と同時に行えます。
反対に、大学病院のデメリットは、医局の都合で頻繁に転勤があることや、給料が安いためバイトが必須であることです。また、下級医の間は上級医の補佐的な役割なので、秘書のような事務作業に追われて臨床の実践的な手技の取得は期待できない点です。さらに、大学病院に残留したい場合は専門医や博士号の取得が必須となります。
民間病院の最大のメリットは給料が比較的良いことと、実践的な経験値が上がることです。各科の医員が少ないため、下級医の段階から必然的に自分が担当する患者の数も増え、自分の采配で治療方針を決定できる機会に恵まれます。特に手技が物をいう外科系であれば、自分が執刀する患者数が増えるため、経験値が上がります。
デメリットは、人が少ないため急な休みなどに対応しづらいことや、子育て中の女医は敬遠されることがあります。特に外科系は、自分が執刀した患者の急変に夜中でも対応する必要があるため、妊娠・子育て中などで夜間のオンコールや当直に対応できない場合は就職に不利です。また、専門医を取得したい場合は、専門医認定施設で勤務しないと実績として認められないため、注意が必要です。
開業する女医も増加していますが、開業の良い点は自由に働けることや地域密着型の医療による充実感が得られることです。また、実績次第ですが大学病院や民間に比べると給料の大幅アップが期待できます。
デメリットは、一から開業準備をする場合、賃貸料や機材導入など多額の借金を背負うことになるので、借金を返済するまでは働き続ける必要があり、体力勝負といえます。また、医師は一人で代わりがいないことが多いため、女医一人で開業する場合は子育てを終えて一段落してから開業する先生が多くみられます。
院長になると、臨床能力だけではなく、院の経営力も必要となりますが、最近は開業している医院や複合クリニックに雇用される形の「雇われ院長」という形態や、複数の医師で外来を回す形態もあります。
女医は、結婚・妊娠・出産・子育て・介護などさまざまな要因により、思い描いていたように継続して働くことが難しいのが現状ですが、現在は上記のような働き方に加えて、アルバイト勤務形態もあります。人生の分岐点で保険を見直すように、自分のライフプランにあった選択肢を選び直しながら、ぜひ医師として生涯にわたり社会に貢献できる形を模索していきましょう。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |