医師に高い診察能力が求められるのはもちろんですが、患者とのコミュニケーション力が患者の満足度につながることから、患者対応の仕方についても留意すべきです。ここでは、限られた診察時間の中で上手に患者と信頼関係を築くコツについてお伝えします。
科にもよりますが、平日外来の患者の多くが高齢者です。高齢者は早口で話されると理解できないことが多いため、一度にたくさんの情報を詰め込んで話すと伝わっていないことがよくあります。
こちらがゆっくり話したとしても、数秒程度しか変わらないので、「分からなかった」と患者に言われて再度繰り返し説明するよりも、初めからゆっくり分かりやすく要点のみ話すほうが効率的です。
また、ゆっくりと落ち着いて話しかけることで、患者にも周囲の医療スタッフにも「余裕がある」「包容力がある」「優しい」といったよい印象を与えることができて一石二鳥です。手は素早く動かしながらも、優しくゆっくり話す技術を身につけるとよいでしょう。
小規模のクリニックでも電子カルテを導入するところが増えています。電子カルテはスタッフ間での情報共有や、処方を継続する時など紙カルテよりも利点が多いものの、記載に手間がかかるため忙しい外来では十分に患者の目を見て話す時間がとれないという欠点もあります。
欠点を補うには、患者の入室時は必ず目をみて元気に挨拶し、大切なポイントに関しては目を見て話す、というように必ず目を見て話す時間を設けることが患者との信頼関係構築につながります。
また、タイピングスピードを上げることや、ブラインドタッチ技術を磨くことで患者とコミュニケーションをとる時間を増やせるので診療の助けになります。
限られた時間で効率よく診療するために問診票があります。問診票があるのに、問診票に書かれた内容を十分に確認せずに「今日はどうされましたか?」と聞く医師がいますがそれは時間の無駄です。
「それは問診票に書きました」と少し怒る患者もいます。問診票がきちんと書かれていたら、それだけで鑑別疾患がある程度絞られてくるので、必ず問診票を確認しましょう。
また、「問診票をきちんと見ていますよ」というアピールのために患者の前で問診票を指差しながら「問診票を見させていただきましたが、3日前から咽頭痛があって、38度の発熱があるのですね...」といったように一緒に確認するのはよい方法です。
さらに、「声がれはありますか?」というようにクローズドクエッションをはさんで鑑別疾患を絞っていくと効率よく診察できます。
限られた時間の中で効率よく診察しながら、患者との信頼関係を築くためには医学的知識のみならず患者と良好なコミュニケーションをとりながら、スムーズに診断・治療へと繋げる力が必要です。ここに挙げたポイントをぜひ明日からの診察に活かしてください。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |