国は積極的に移民を労働源として受け入れる方向に動いており、外国からの旅行者増加も含め、今後も外国人の患者は増大すると考えられます。ここでは、 外国人の患者の診療で起こりがちなトラブルと、注意すべきポイントについてお伝えします。
グローバル化により日本においても英語の必要性が高まり、医療現場においても英語を話せるスタッフは増えてきました。
英語を話せる患者の診療は医師が個々に対応しているケースが多いのですが、英語が話せない患者は意思疎通が十分にできずにトラブルになることがあるので医療者にとっては注意が必要です。
日本では中国および韓国人の患者が外国人の中では最も多いのですが、その中には英語が話せず日本語が不自由な人も少なくありません。
「はい、はい」と患者が答えていたため医師の発言を理解しているのかと思っていたら、全く治療内容をわかっていなかったというケースはよくあるので本当に理解しているのか逐一確認が必要です。
文化の違いで最も問題になるのは宗教がらみの件です(宗教上豚肉が食べられない、男性が女性患者をさわれない、肌や髪を出せないなど)。
イスラム圏からの旅行客や移民が増えていますが、イスラムの女性は知らない男性と同室にいることができないため、小児科の大部屋入院で父親が付き添い入院した時に、同室に付き添い入院をしていたイスラム信者の女性からクレームがでた事例もありました。
また、輸血問題でよく取り上げられる宗教団体エホバなど、命に直結するケースもあり軽視できません。
多宗教・多民族国家で成り立つ欧米では、入院や手術の前に特定の宗教を信仰しているかを聞くところが多いのですが、日本はまだまだ単一民族国家の意識で運営しているため、様々な宗教に対応できる医療施設が少ないのが現状です。
これといった一つの解決策はないので個々のケースに慎重に対応し、診察頻度や必要性に応じて施設内でマニュアルを作成するとよいでしょう。
政府は外国人労働者を今後積極的に受け入れる様子ですが、上記にあげたように英語が話せない、宗教色が強い患者は、医療スタッフの負担を増大させるのはまぎれもない事実です。
忙しい外来は2〜3分/人の診療時間で回しているので、一人言葉が通じない外国人がやってくるだけで、他の患者の待ち時間は増えて患者満足度は下がり、医療スタッフの負担は倍増します。
中核病院では医療通訳会社と契約して外国人患者に対応しているところもありますが、ほとんどの病院は現場の医療スタッフがその場しのぎで対応しており、いつトラブルが起こってもおかしくない状況です。
特定の移民が多い地域で勤務している場合は、簡単な外国語の問診をあらかじめ作っておいたり、旅行者対応を行なっている地域の病院を把握しておくのも対策の一つです。
今回は、増大する外国人患者を診療する際に起こりがちな問題について取り上げました。外国人というだけでなく、文化や言語を含む患者背景や性格なども含めケースバイケースに対応する必要があります。
オールマイティーな解決策を提示するのは難しいですが、ここに挙げた問題については注意しておきましょう。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |