外科医として第一線の医療現場で活躍することと子育てとは、物理的に、時間的に難しいのが現実です。その現実のなか、なるべく希望の条件のもとで希望の勤務先で長く活躍できる方法について考えてみましょう。
パート1で、外科系は医局に属したほうが有利と書きましたが、その理由としては以下が挙げられます。
外科は医局に所属している人が多いため、医局のメリットを生かして仕事と子育てを無理なく平行できる条件を教授に交渉するとよいでしょう。大学病院は給料が安いものの、医員数が多く、お互いカバーしあえるので女医の復帰先としては理想的です。
医局の関連病院は大手の病院が多く、個人でアプローチすると就職は難しいものです。しかし、医局関連施設であれば教授の力添えにより時短勤務といった希望条件を交渉しやすく、教授の采配で就職できるため、圧倒的に就職しやすいというメリットがあります。
近年は医局に所属する医師が減ってきたことから、男性社会の外科医局においても医員確保のために、出身大学に問わず、子育て中の女性医師であっても歓迎する医局が多くなってきた印象があります。
筆者の医局においても、女医の半分は他大学出身です。しかしながら、外科系には時代の波に取り残された古い体制の医局が未だに存在し、(暗黙の了解で)産休を認めない、産休を取るなら医局を自動的に退局しなければならないというブラック医局もあるので注意が必要です。
外科系は医局に所属していた方が経験においても復帰においても有利ですので、医局に所属することはよい事だと思います。しかし、前述したようなブラック医局に入局しないために、医局に入る前には必ず見学し、産前産後も女医が無理なく働いているか、子育て中の女医はどのように働いているのかといった情報を必ず収集しましょう。
初期研修制度が始まり、出身大学にとらわれず他大学の医局を選択する人が増えてきました。まだ医学生や初期研修医の皆さんは、病院見学や初期研修医制度を利用して働きやすい医局の見極めを慎重に行いましょう。
外科を選んだ人は、外科手技が好きだから外科に進んだ人がほとんどなので、妊娠・子育て中もできるだけ手術に関わりたい人がほとんどでしょう。しかし、中堅医師10〜20年目(大学では講師、外科病院では医員・部長に当たるクラス)になると、第一線の手術現場に身を置き半日以上の長時間手術の執刀医を続けている女医は少ないのが現実です。
後期研修医までは貪欲にとことん頑張ることを勧めますが、それ以降は、限られた時間のなか「将来的に自分がどの手技をどこまで身につけたいのか」、「身につけた技術は20年後・30年後も続けているのか」を考えて手術の取捨選択をした方がよいかもしれません。
いままで筆者が勤務した大学・急性期病院では、消化器外科・産婦人科・心臓血管外科・呼吸器外科・脳神経外科・頭頸部外科・整形外科といった緊急手術や長時間手術が多いハードな外科において、子育てしながら第一線で執刀医として活躍する子育て中の女医はほぼゼロでした。
特に、手術の執刀医かつ管理職を任される中堅医師クラスになると離職率が高くなり、筆者の医局においても、中堅医師クラスで子育てしながら外病院の部長として第一線で活躍する女医はただ1人です。働き続けるとしても短時間の手術のみ執刀する人や、開業するなど外来中心の勤務形態にシフトする人が多くなります。
したがって、外科においても外来で重宝される専門性を一つ二つ身につけておくと長期的に非常に有利です。例えば、産婦人科であれば不妊外来、脳神経外科であれば物忘れ外来・小児脳神経腫瘍外来、整形外科における腰痛外来が挙げられます。
ここでは、外科女医として長期的に活躍できる方法についてお伝えしました。特に、医学生や初期研修医にとっては、結婚や妊娠は現実味がなく先のことと思えるかもしれませんが、内科よりも子育てと仕事の両立は想像以上に大変で、理想とはかけ離れたものとなるかもしれません。このパートで述べたことが少しでも将来のキャリアの役に立てばと思います。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |