子供との時間や自分の身体をいたわる時間をある程度確保しつつ、外来アルバイトのみでは得られない経験も積めてキャリアに繋がるのが時短勤務のいいところですが、一方で時短勤務のデメリットもあります。ここでは、筆者の経験も踏まえて、時短勤務のメリット・デメリットをお伝えします。
時短勤務のメリットは以下のような点が挙げられます。
最大のメリットは、二度と体験できない、子供と過ごす貴重な時間をある程度確保できることでしょう。実際のところ、17時に勤務を終えて帰るとすぐに子供に夕食を食べさせ、お風呂に入れて、明日の準備をして寝かしつけて...という一連の流れで自分の時間とは皆無の怒涛の1日が終わり、「仕事をしているほうが楽」という声もよく聞きます。しかし、子供が愛着障害を起こさないためにも、3歳までの間は親子で向き合う時間をしっかり持つことが大切です。
また、常勤先の時短勤務の制度を活用して公休日に外来バイトを入れることで、効率よく稼ぐことも可能です。例えば、筆者の病院では、常勤として扱われる最低日数は週2日からですが、厚生年金保険に加入できるのは3.5日以からなので、厚生年金に加入できるように週4日9時〜17時勤務から開始して、公休日に外来バイトを入れています。
最後に、「第二子以降を希望する場合、時間・体力的面で有利」という点に関してですが、第二子以降を希望する場合、仕事で精魂つきはてて帰宅してから「さあ子作りを!」という気持ちにはなかなかなれないものです。同年代の女医をみても、第一子出産後の時短勤務時期に第二子を授かっている率が高く、少子化対策としても時短勤務は有効だと思います。
では、時短勤務のデメリットはどのような点が挙げられるでしょうか?
デメリットとしては、物理的にできる仕事が制約されるという点です。外科内科問わず、朝の外来が始まる前(8時が多い)に病棟回診するところがほとんどですし、外科系では術後出血などの時間外の緊急対応ができないと、患者に責任を持てないため執刀しづらくなります。また、どの科もカンファレンスや勉強会は時間外や土日に行われることがほとんどですので勉強できる機会も減少します。
次に給与面ですが、時短勤務では大幅に減給するため、ぜひともバイトはしたいところです。しかし、政府が副業を勧めているにもかかわらず、いまだに職員が公務員として扱われる市立病院や民間病院の多くが副業を禁止しています。バイトをする場合は別途申請をすれば可としているところもありますが、医局からの派遣バイトでない限り認められないケースなど個々の施設で許可が下りる条件が異なります。
申請せずに副業がばれると減給あるいは最悪の場合解雇されるので、バイトを始める前に必ず勤務規約を確認し、申請しましょう。バイト許可条件を公にしていない施設の場合、周囲の先生にこっそりバイト状況を伺い、上手に申請する方法を教えてもらうのも一つです。
最後に、時短勤務希望者はフルタイム希望者と比べ、就活面でも、経験の機会を与えられるか否かという点においても不利な立場であることです。特に外科医は、執刀医として技術を磨き続けなければ、若手の男性医師がどんどん伸びてきて執刀できる機会を逃してしまいますので、この問題は深刻です。
時短勤務をこれから考えているママ女医の皆さんは、ここで挙げたようなメリットとデメリットを天秤にかけることになります。子育てと仕事の優先順位は人それぞれですが、時短勤務という限られた時間の中で、仕事の到達目標をかかげ、子育てにおける優先順位をはっきりさせると、両方のパフォーマンスがあがり、育児と仕事のどちらも中途半端になっているのでは...という不安や不満が少し解消されると思います。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |