某医科大学が女子医学生合格者コントロールしていた事件に関連して、医療現場で活躍している女医に焦点を当てた記事をよく見かけるようになりました。しかし、女医の現実と記事の内容とのギャップに違和感をもっている方も少なくないと思います。ここでは、そのギャップについてお話します。
多くの医学部で女性医学生が敬遠される理由として、外科医の不足がその一つとしてあげられますが、それに反して「女医は外科現場でもこんなに活躍している!」という記事が好んで取り上げられるようになりました。
記事では、女医も男性外科医並に働ける点が強調されており、「体力があり、風邪を引いたことがない」「産休復帰後、少なくとも土日のどちらかは当直をしている」「緊急時は子供を連れて病院にかけつけている」といった力強い言葉が並んでいました。
確かに、女医の一部は仕事と育児の全力疾走が苦にならない『スーパー女医』かもしれません。しかし、多くの女性にとって、「時短勤務活用」や「当直やオンコール免除」という好条件下でも、育児と勤務の両立が時間的にも体力的にも厳しく感じるものです。2〜3歳になっても夜泣きが止まずに寝不足が続き精神的に追い詰められることもあり、いつ本格復帰ができるかは人それぞれです。そのため、一部の『スーパー女医』がモデルケースのように男女平等の権利のもと取り上げられることに違和感があるのです。
両親の助けなしで、子供との時間をしっかり確保できて(いわゆる9-17時勤務)、最前線で活躍する外科女医がいるのであれば会ってみたいと思っています。というのも、下にあげるような疑問がふつふつと湧いてくるからです。
など...
子供が中学~高校生に成長し、子供が一人で安全に留守番できる歳になったといえども、親の目がなくても羽目をはずさずにすくすく成長できる子供は少ないものです。誰だって親のいない「し~ん」と静まり帰った家に帰るのは嫌ですよね。子供であればなおさらです。子供がこのくらいの歳になると、親が他界しており親の手を借りることができないか、親の介護というさらなる問題を背負うことにもなります。
子供と向き合わなかったことを後々後悔しないように優先順位を考えるべきですが、外科医に限っていえば、『スーパー女医』になるためには子供との時間を犠牲にせざるをえないでしょう。
大手医療サイトが行ったアンケートでは、女医の6割強が某医科大学の女子医学生合格者コントロールに関して支持していたことが、医学部における男女平等の理想と現実とのギャップの表れだと思います。出産・子育てを経てフルタイムに復帰できるまでの道のりは人それぞれであり王道はありませんし、外来非常勤やスポット勤務であっても、社会に立派に貢献していることには変わりありません。輝かしいモデルケースに振り回されず、肩の力を抜いて、自分のできる範囲で医師免許を活かして働き続ければよいと思います。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |