「子はかすがい」という言葉があるように、子供と夫の絆を深めることで、女医の育児負担が減り、夫婦関係がうまくいくことが往々にしてあります。特に、出産前に全く家事をしなかった夫の場合(医者に多い)は女性が上手に男性をリードし教育することが大切です。ここでは、夫が子供との関わりを積極的に持てるような工夫をお伝えします。
男性も子供一緒の時間を持つことで、父親の自覚が形成されていくものです。しかし、女性が完全母乳にこだわると、新生児~生後3ヶ月くらいまでは数時間毎に授乳する必要があり、どうしても赤ちゃんは母親と接する時間が長くなります。
そうすると、赤ちゃんとの接触時間が圧倒的に少ない夫は、一人で子供をどのように扱ったらいいかを学べないまま子供が大きくなってしまい、結果として、「育児は母親任せ」という夫が量産されてしまうのです。都合のいい時だけ子供をかまって、面倒くさいことは全て妻まかせの夫に不満がつのり、「子はかすがい」どころか、子供できたことで夫への愛情がもてなくなる「産後クライシス」の一因となってしまいます。
また、完全母乳だと勤務中に授乳時間をもうけたい場合、保育施設や医療機関、勤務時間が限られるといったデメリットがあります。一方で、早くから粉ミルクにも慣れさせておくと、仕事の復帰先の選択肢が広がり、新生児時期からでも夫が子供と二人で安心して過ごせて、早期に仕事復帰が可能になります。
アレルギーなどでどうしても母乳以外無理というケースもありますが、そういった事情がなければ、早期から母乳と粉ミルクの混合での子育てがおすすめです。
英国にいるとき、「男性が子供と二人きりで過ごす時間は少なく、 多くの場合、母親がいる環境で子供と過ごしている」という研究結果がニュースになっていたことが非常に印象に残っています。つまり、「男性は何かあればすぐに母親に任せられる環境でしか子供と過ごしていない」ということです。男女平等の意識が強い欧米先進国でさえも、女性任せの育児が多いのだという結果に驚いたことを覚えています。
日本では、母親抜きで父親と子供が過ごす休日に、不慮の事故で子供が亡くなるという悲しいケースが毎年ニュースになっています。これは、父親が普段子供と過ごす時間が少ないために、子供に対する危機管理能に欠けていたことが一因、とうことは想像にかたくありません。医師業務でも同じことが言えます。臨床の危機管理能力は日々の経験から培われるものであり、また、見守ってくれる上級医がいなくり一人立ちしたとき初めてそのありがたみを感じるものです。
赤ちゃんのころから夫が一人で育児ができるよう、筆者が実際に実行したのは「土日(夫が医師の場合は夫の公休日)に敢えて仕事を入れる」ということでした。体調に問題なければ、産科医の診断書のもと産後6週から仕事復帰が可能なので、敢えて、夫の休日である土日に外来バイトを入れて、夫が一人で赤ちゃんを見ざるをえない状況を作りました。この方法は、夫の育児教育もできるし、自分の仕事のブランクを埋めることもできて、なおかつ収入も得られるという一石三鳥の効果がありました。
体力的にもフルタイムですぐに復帰するのは大変ですので、まずはスポットや非常勤バイトから開始がおすすめです。
ここでは、不仲の原因ともなる夫婦間での育児の不平等問題を改善すべく、産後早期から夫を教育し、夫が1人で育児ができるようになる工夫についてお伝えしました。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
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めぐみ マイナー外科7年目。5年目の海外留学時に妊娠・出産。産後6週目より仕事に復帰し、育児と仕事の両立の難しさに直面しつつ奮闘中。経験を生かし、内科・救急・健診業務なども行なっています。 |