ある転職サイトが行ったアンケートによると、50代の看護師で転職経験のある人は約9割、平均2.8回転職したという結果が出ています。つまり生涯のキャリアの中で約3回職場を変わるということです。
別のアンケートでは、転職した人のうち、成功したと思う人は36%、失敗したと思う人は32%と、3人に1人は転職に失敗したと感じています。ではその失敗の原因はどのようなものでしょうか?
なりたい自分や自分の希望がはっきりしていないと、転職に失敗してしまいます。例を挙げると、「有名な病院だから」という理由で転職先を決めた看護師がいます。この人は、知名度もあり教育制度も整っている施設に転職しました。
確かにその通りの職場だったのですが、実際に働いてみると内部プロジェクトの委員をはじめ研修やカンファレンス、学会への出席など、日常業務の他にもたくさんの役目があり、ヘトヘトになってしまいました。やる気が旺盛で高い目標をもった人ならよいかもしれませんが、家庭や趣味にも時間を割きたいという人には向いていません。有名イコール自分に合った職場というわけではないのです。
他には「給与が高いので決めた」という看護師もいました。この人は、その地域では破格の条件を提示している病院に、高い給与に魅かれて転職しました。
しかし勤務を始めると、内情がひどすぎてついていけなくなり、すぐに辞めることになったのです。給料が相場に比べて高いのは、そうでもしなければ人が来ないからかもしれません。自分の目的や希望がはっきりしていないと、好条件につられて転職先を決めてしまい、失敗することになるのです。
転職するときに誰にも相談しなかった人が陥りやすいのが情報不足による失敗です。転職には待遇や休暇制度はもちろん、職場の雰囲気や人間関係、診療方針などの情報が欠かせません。責任感の強い人ほど自分のことは自分で決める、人に迷惑をかけたくない、忙しい友だちに相談して時間を奪いたくない、などという思いが強く、相談しない傾向が強いのです。
しかし、転職は人生の一大転機。誰かにアドバイスをもらうことも必要です。転職経験のある人や、転職サイトの経験豊富なエージェントに相談することを考えましょう。
他には、複数の求人を比較検討しなかったという失敗談もあります。待遇や休暇など、だいたいこれが相場だろうと勝手に思い込み、最初の求人以外は検討しなかったというケースです。職場自体に不満はなくても、近辺の同じような病院やクリニックが、もっと高い給与だったり休みが多かったりすると、やる気が一気に吹き飛んでしまいます。
転職に焦りや思い込みは禁物です。複数の転職サイト、複数の求人情報を比較検討するのは基本中の基本です。
求人票に書かれていた条件や仕事内容が実際と異なることは、実はときどき起こります。転職して最初の給与をもらったところ、基本給や手当が求人票と異なることに気がついたという人もいます。それでも前職よりも金額がアップしていればまだしも、ダウンしていたら何のために転職したのかわからなくなってしまいます。
また、ボーナスありの求人だったのに、いざボーナス時期になってから、出ないことがわかったというケースもあります。
他にも、「面接時に聞いていた部署と違う部署に配属された」とか「院長夫人が買い物や犬の散歩を頼んでくる」といった、業務と関係ない仕事を看護師に押し付ける職場もあるのです。
転職先を最終決定する前に、配属される部署や勤務時間、基本給と手当、仕事内容、休暇制度など基本的な労働条件はしっかりと書面で確認しましょう。加えて自分にとって外せない条件、たとえば子育て期間中には短縮勤務を認めてもらえるかといったことも、しっかりと文書で確認しておくことが大切です。口約束や確認不足を後からひっくり返すのはとても大変なことなのです。
看護師は求人が多く引く手あまたとはいえ、転職に失敗して後からやり直すのは、かなりのエネルギーが必要です。転職の目的をはっきりとさせ、複数の求人を比較して、大事な条件はしっかりと確認し書面に残すようにしましょう。