「ホームドクター制度」。これは「かかりつけ医」のことで日本では「かかりつけ医」を持つことが推奨され始めたのは最近ですが、欧米ではすでにホームドクター制度が確立しています。
かかりつけ医は、いわば健康や病気に関する最初の相談役であり、2016年4月に開始した「かかりつけ薬剤師」は薬に関する身近な相談役です。
「かかりつけ薬剤師」制度を導入した国の目的と、患者さん自身がかかりつけ薬剤師を持つ目的には一体何があるのでしょうか。
「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局」制度の開始には高齢化社会を支える目的があった
患者さんが「かかりつけ薬剤師」制度を利用した場合一体いくら払うの?
患者さんがかかりつけ薬剤師・薬局を選ぶ目的1:全ての服薬管理をしてもらえる
患者さんがかかりつけ薬剤師・薬局を選ぶ目的2:病気も含めた健康管理をしてもらえる
まずは「かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局」制度がなぜ始まったのか、その目的についてみていきましょう。
平成25年時点で薬局の数は約57000施設で、毎年増加の一途をたどっています。薬剤師についても薬学部の増設を背景に増加し平成 24年時点で 28万人おり、そのうち薬局に従事する薬剤師の割合は年々高まっています。
一方日本では高齢化が急速に進んでおり、2025年には人口の約20%近くが75歳以上になると推測されています。また、認知症高齢者の数も700万人に達すると見込まれています。さらに、平成27年3月時点で85歳以上の約60%近くが、介護が必要な状態にあります。
このような状況から、高齢者の多くは地域の身近な医療機関を必要とし、在宅医療を受けることが想定されます。
そこで、国は2025年を目標に高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができる住まい・介護・予防・医療・生活支援が提供される地域包括ケアシステムの構築を進めています。
これらの実現のために新たに進められている制度が「かかりつけ医」や「かかりつけ薬剤師」なのです。
特に、全国規模で増加している薬局・薬剤師の機能を高めることは、地域包括ケアの役割を担える重要な機会といえます。
国や地域の期待に応えるためにも薬剤師は、かかりつけ薬剤師としての役割を発揮していかなければなりません。
しかし、かかりつけ薬剤師は誰もがなれるわけではなく、ある要件を満たす必要があります。
その要件には、薬局勤務経験や1週間あたりの労働時間、在籍年数、研修認定の取得や医療に関わる地域活動への参加などの細かい条件があります。
かかりつけ薬剤師に指定してもらうには患者さんの同意が必要です。また、患者さんがかかりつけ薬剤師制度を利用する場合、無料ではなく一定額のコストが発生します。
具体的に、1割負担の場合20円から30円、3割負担の場合100円程度の自己負担が求められます。
国や地域に貢献できる「かかりつけ薬剤師」になるには、患者さんが自己負担額を払ってでも「かかりつけ薬剤師」制度を利用してもらえるよう努めなければなりません。
では、患者さんがかかりつけ薬剤師・薬局を選ぶ目的には一体どのようなことがあるのでしょうか。
かかりつけ薬剤師は、担当患者さんの服薬状況を一元管理する義務があります。そのため、患者さんは重複投薬を避けることができたり、併用薬の相互作用を未然に防げたり、副作用の確認をしてもらえたりといったメリットがあります。
例えば、重複投薬の場合は健康上のリスクを回避できるだけでなく、薬代の自己負担額も下がります。残薬が余っている場合も薬代を抑えることができます。かかりつけ薬剤師制度を利用して自己負担額が多少上がったとしても、それ以上の価値があるといえるのではないでしょうか。
さらに、医師には聞けないこと、自分で医師に確認できなかったことをかかりつけ薬剤師を通して疑義照会してもらえたり、質問に答えてもらえたりする点もかかりつけ薬剤師制度を利用する目的の大きなひとつといえます。
また、「24時間対応や在宅医療の依頼ができる」ということも患者さんにとっては大きな魅力といえます。夜間の緊急時に薬の相談に乗ってもらえたり、自分の足で薬局に通えない場合に気の知れた、かかりつけ薬剤師さんが投薬に来てくれたりと安心できる方も多いでしょう。
かかりつけ薬剤師は患者さんの服用している医薬品の把握だけではなく、サプリメントやOTC、健康食品についても把握・管理しなければなりません。また、日常生活や食生活に関する健康上のアドバイスも必要に応じて行います。
「薬だけでなく健康に関する身近な相談役になってほしい」という目的で、かかりつけ薬剤師を利用する患者さんも増えてくると予測されます。
患者さんがかかりつけ薬剤師を持つ目的を知ることで、これから私たち薬剤師が求められるものを理解することは、患者さんに寄り添った医療を提供する上で欠かせないポイントといえます。
一人でも多くの患者さんがかかりつけ薬剤師制度を利用し、国や社会が求める薬剤師の職務を全うできるよう日々努力していくことが必要です。
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やや オランダ在住のフリーライターです。調剤薬局に勤務したのち、化粧品処方開発、新製品のプランナーやマーケティングなどに携わりました。 薬剤師の免許を所有しており、知見をいかして医療・美容、そして海外生活など幅広いジャンルで活躍しています。 |