患者さんへの服薬指導をするとき、「何か変わったことはありませんか?」や「気になることはありませんか?」と尋ねてはいないですか?それでは「ありません」と言われてしまう可能性がとても高いのです。薬剤師として気になることはどのようにして聞けば話してもらえるのでしょうか。
私たち薬剤師が意図する「変わったこと」には様々な事柄が含まれていますよね。病状の変化はもちろん、副作用はでていないか、別の疾患の治療が始まっていないか、生活形態は変わっていないか、などなど。
しかし、患者さんもそうとは限りません。ただ病状が悪くなっていないかだけを聞かれていると判断してしまうことも多くあります。実際服薬指導では病状の悪化があるかどうかよりも、副作用の初期症状があるかどうかや相互作用は大丈夫かどうかを知りたい場合も多いため、すれ違いが起きてしまいますよね。
このような視点のズレを理解し、質問の方法を変えていく必要があるのです。
視点のズレに関わらず、患者さんから知りたい情報を引き出すためには、分かりやすく具体的な質問をする必要があります。例えば「体調の変化はありませんか?」ではなく「仕事中に強い眠気を感じることはありませんか?」など、いつどんな変化があるのかが分かるような質問をすべきです。
閉じた質問と開いた質問についてはご存知ですか?閉じた質問とはYESまたはNOで答えられる質問、開いた質問とは自由に答える質問です。
服薬指導ではこれらをバランスよく組み合わせる必要があるとされていますが、情報収集には閉じた質問の方が適していますので患者さんが詰問されていると感じない程度に割合を増やしてみても良いかもしれません。
質問の内容についても慣れや経験が必要ですが、指導の流れをうまく作れるかも重要なスキルです。いくら具体的な質問ができたとしても、単に項目を埋めるだけのような質問の列挙では患者さんの思考があちこちと飛んでしまい、浅い答えしか得られません。
前の質問に引き続いてさらに掘り下げるような質問を続けましょう。聞かれる質問数は同じでも、バラバラに聞かれるよりも質問に流れがあるほうが圧倒的に患者さんの疲労感が軽減します。
疲労感を感じると次回の来局にも繋がりにくくなりますので、ぜひ指導の流れは意識してくださいね。
患者さんと薬剤師では治療や薬に対する考え方に大きな差があります。この差を理解し、埋められるような服薬指導ができてこその薬剤師ですし、もしこのような指導が出来れば患者さんもたくさんの情報を伝えてくれるはずですよ。
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |