服薬指導で患者さんにどの程度情報を伝えるかは難しい問題です。危険を伝えすぎて不必要に怖がらせてもいけませんし、伝えなければ患者さんの身に何かが起こってしまうかもしれません。自動車の運転に注意しなければならない医薬品は数多くありますが、中でも特に服薬指導で気をつけたい医薬品について考えてみました。
薬剤師へのアンケート調査(日本交通科学学会誌, 15巻, 3号掲載)によると、「服薬指導のとき運転への影響を必ず伝える医薬品」として高ポイントを獲得したのは以下のような医薬品です。
⚫ 70%以上の高ポイント
⚫ 51~60%
⚫ 21~50%
確かに気をつけて指導する医薬品ばかりですよね。これらの医薬品が処方されている時には忘れずに危険を伝えたいところですが、患者さんも注意事項を守ることが難しい場合もあります。
例えば、自動車の運転を禁止されると日常生活に大きな支障がある場合。こうした場合は、危険を理解しながらもやむを得ず運転してしまうか、副作用を恐れて薬を使用しなくなってしまうことが考えられます。
普段、自動車をどのくらいの頻度で運転するかは患者さんに尋ねることでわかりますが、来局の手段を見て予測している薬剤師もいるそう。ただ運転をしないように、と伝えるよりは「今日は車でいらっしゃったようですが、普段からよく運転されますか?」と事実に即した質問から入るほうが実感が湧きやすいですよね。
自動車の運転を避けたい副作用には主に眠気と眼のかすみ、まぶしさがありますよね。しかし一般的には「運転に危険な副作用=眠気」という認識があるように思います。また、この「眠気」は眠くなってウトウトしてしまうことだけを指していることも多いため、危険性が正しく伝わらない場合も。
つまり、ただ「眠気に気をつけるように」というと眠気の自覚が無いまま判断力が低下するインペアードパフォーマンスによる危険を回避できない可能性があるのです。かすみやまぶしさについても、具体的に説明して初めて気付く患者さんも多いため注意が必要です。
仕事に慣れてくると向上心も薄れてしまいがち。しかし、人の健康や命に関わる医療職では知らなかったでは済まされないことがたくさんあります。新薬について調べるのはもちろん、慣れ親しんだ薬でもどんな危険があるのか、それについて他の薬剤師がどんな服薬指導をしているのかを常に気をつけておきたいですね。
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |