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あーこさん(50代/大阪府/薬剤師歴18年) |
もともとコンピュータに興味はありましたが、大学の卒業研究のためにプログラミングなどコンピュータを使うことが増えて本格的に就職先として考えるようになりました。当時国内の医薬品メーカーはコネなし女子にはあからさまな塩対応(編集注:そっけない対応のこと)で、応募書類さえ受け付けてもらえないことも多く怒りを感じていました。それに引き替え電機メーカーはちょうど業界が伸びていく時代だったこともあり、すべての学部にオープンでウェルカムな雰囲気だったのも選択した大きな理由です。
システムエンジニアという仕事は大好きでしたが残業や出張が当たり前の業界でした。退職した会社には再雇用制度もあり、実際に戻ってこないかとお誘いも受けました。しかし当時の私の環境は幼い子供が二人おり、まわりのサポートも見込めない状況でしたので一人前のSEとして働く自信がなく別の道を考えました。
それでも復職を考えた最初は薬剤師ではなく、システム関係の仕事希望でしたが派遣会社に登録しましたら、あるメーカーの物流センターの管理薬剤師の仕事を紹介されました。
それをやっていくうちに薬剤師として現場経験が必要だなと思い始め、ちょうどその頃調剤薬局でパートをしていた友人の「未経験でもやっていけるよ」という言葉にも背中を押されて、派遣の期間満了後思いきって薬剤師を始めることにしました。薬剤師の仕事は午前だけのパートもあり、育児との両立がしやすかったのもスムーズに始められた要因の1つだったと思います。
私が最初に勤めた薬局では薬袋に薬名と効能を手書きすることになっていましたが、最初は恥ずかしながらちんぷんかんぷんでした。そこで、毎日その日にさわった薬名をメモして帰り、子供が寝てから「治療薬マニュアル」片手に勉強しました。
あとはおばさんの厚かましさで、同僚の薬剤師さんや事務さんに質問しまくりました。ありがたいことに同僚に恵まれて皆さん親切に教えてくださり、おかげさまで基礎が身についたと思っています。
常に意識しているのは、その人の特性を活かすということです。その上でただ作業をこなせるだけの人ではなく、考える薬剤師になってもらえるような関わりを心がけました。
管理薬剤師として後輩の研修やキャリア形成に携わるうちに自分に裏付けとなる専門知識がもっと必要だと思うようになりました。また組織を超えて広く薬剤師のキャリア形成のお手伝いができないかという気持ちが強くなり、キャリコンサルタントの資格取得を目指すことにしました。
薬剤師とキャリアコンサルタントには共通点がたくさんあります。どちらも相手の話をよく聞き、自分の専門知識を使って相手の状況改善を支援していくことが使命です。
キャリアコンサルタントの仕事を始めてからいろんな業界の人とお話する機会があり、視野が広がったように思いますし、キャリアコンサルタントの資格取得のためと思っていた勉強が、現在、薬剤師の対人業務にすべて活かされており、両立することで相互の仕事に良い刺激となっています。
気持ちの切り替えが重要だと思っています。それぞれの仕事に集中できるように段取りを前もって考えておくことも心がけています。
薬剤師さんのキャリア形成の支援や研修のファシリテーションをやってみたいと思っています。
女性の生き方の選択肢が広がるにつれて迷いや悩みも増えてくることと思いますので、私の今までの人生経験が少しでも誰かのお役に立てば嬉しいなと思います。
学生時代に薬剤師資格を取得しつつ、SEとして仕事人生をスタートし、出産・退職・育児を経て調剤薬局で薬剤師として復職。その後管理薬剤師まで務める中で、キャリアコンサルタントという新たな方向性を見出されたあーこさん。
薬剤師という資格は安定した雇用を約束してくれますが、そこに経験と別の国家資格であるキャリアコンサルタントが「掛け算」されたことで、あーこさんらしい独自のキャリアが築かれていっている様子が伺えます。
「女性の生き方の選択肢が広がるにつれて迷いや悩みも増えてくることと思います」というコメントがありましたが、正しくあーこさんのキャリアはそんな女性薬剤師にとって参考となるものではないでしょうか。
あーこさん、どうも有難うございました!