中毒治療といえば救急医療の現場でも薬剤師が先陣を切って活躍できる分野。しかし緊急になる前に防ぐことができればより良いはずですよね。乳児や小児が成人用の薬を服用する事で危険な状態に陥ってしまう事故も珍しくありません。今回は小児の誤飲とOne pill can kill について考えてみました。
小児が誤って服用するとたったの1錠でも死に至る危険性が高い医薬品のことです。つまり血中濃度の危険域が低く、成人の通常使用量だとしても体重の軽い小児が服用することで容易に中毒症状が発現してしまう医薬品のことを言います。
大学の薬学部では実際の錠剤(商品)として学ぶことが少ないためあまり話題に登りませんが、医療現場で服薬指導する際には患者さんにもイメージしやすい概念と言えるでしょう。薬効群や成分は主にアメリカの学会で発表されたり、話題に登ったりしているので日本で発売されている製品が同じように1錠で致死量に達するとは限りません。しかし少量で危険であることは変わりないため、細心の注意が必要です。
クロザピンなどの抗精神病薬、三環系抗うつ薬のほかオピオイドなどがあります。これらの薬は必ずしも命に関わる危険性という意味でないにしろ、一般的に「危険」というイメージが持たれやすいですよね。そのため使用者や周りの大人が何らかの方法で注意深く管理しているケースが多いでしょう。
しかしニフェジピンなどのカルシウム受容体拮抗薬や、グリメピリドなどのSU剤をはじめとして、比較的簡単に長期間処方される医薬品についてはどうでしょうか。危険性の高さが認識されていないケースも多いと思いませんか?
また小児自身にも処方される可能性のある抗てんかん薬のカルバマゼピンなどは、小児の年齢によっては本人に任され、管理がずさんになってしまう可能性があります。
小児自身に処方されていれば通常量はもちろん適切ですし、1錠飲んで危険なほど高用量の規格が処方されているとも考えにくいでしょう。したがって、「One pill can kill」が起こるのは他の大人に処方された薬を小児が誤飲してしまうとき。大きな原因は両親や祖父母などの家族がうっかり目を離した隙に飲むことです。
そして薬剤師としてできるのはやはり危険性の周知と予防法の指導ですよね。毎日飲んでいる降圧剤がそれほど危険なものだったとは、という患者さんも少なくないのできちんと1剤1剤実物を指しながら注意喚起を行います。
また誤飲事故を防ぐための基本ですが高い場所、鍵のかかる場所など子どもが容易に取り出せない場所にしまうこと。また子どもに処方された薬がある場合は、大人用のものとは別に保管することもあわせて指導したいところです。
救急医療など緊急事態で素早い判断ができる薬剤師はかっこいいもの。しかし普段の服薬指導によってその緊急事態を回避させられる薬剤師も同じくらいかっこいいですよね。危険な医薬品の知識と患者さんへの伝え方をすぐに引き出せるよう、常日頃勉強しておきたいものです。
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |