医薬品の効果や副作用の検討に重宝する論文。研究中でなければ毎日論文を眺めることはないでしょうが、たまにしか見ないからこそ正しい判断をできるようになりたいですよね。今回は医薬品について調査された論文を読む際に気をつけたい気をつけたいポイントを紹介します。
医薬品の非臨床試験も臨床試験も様々な方法があります。例えば動物の種類やヒトであれば男女、年齢、疾患の有無などで結果に差が生まれますよね。またどれくらいの数のサンプルを用意するか、期間はどのくらいかなど調査方法は多種多様です。
結果を細かく見る前にきちんと判断しておきたいのがここ。調査対象は目的を達成するために妥当であるか、です。いくら結果が「良い」ものであっても、実際目的を判断するために有効でなければ意味がありません。目的達成にはどんなデータが必要かと調査対象の特徴をしっかりとつかんでおきましょう。
次はデータの内容について注意したいことです。調査で得られたデータが本文中にそのまま記載されたものもありますが、大抵は表やグラフにまとめられていますよね。時間のない時はこれらの表やグラフを見るだけでも内容が把握でき、英語に自信がない場合も文章読解の助けになります。
そんな便利な表やグラフだからこそ注意が必要。データの数字自体に虚偽がなくても、表やグラフの見せ方ひとつで読者の印象は大きく変えられます。意図的に一部の結果が抜かれていないか、縦軸、横軸のスケールが不自然に切りとられていないかなどをチェックしましょう。
最後に重要なチェックポイントが結論の妥当性。結論の項目には様々な調査結果から導き出された結果が記載されています。しかし、データの解釈は難しく統計的な判断や偏見のない判断などが必要となります。例えば医薬品の効果を既存のものと比べたとき、有意差を算出しますがほんの0.5ポイント変わっただけで結果が反転してしまうことも有り得るのです。
したがって誤った解釈が行われている論文もあると考えてよいでしょう。そして、誤った解釈のある結論は案外あたりまえの「常識」に矛盾していることも。解釈を専門的に判断できればそれに越したことはありませんが、もし難しければ本当に基本的な「常識」にあてはめてみてくださいね。
時々、一般社会でも研究不正のニュースが報じられます。データの改ざんは利益や名誉のためはもちろん、解釈の方法によって意図せず行われてしまうこともあります。したがって、論文を読者として利用するときも本当に正しく妥当な情報かを判断し、自分の仕事に活かしたいですね。
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |