薬剤師という資格は医療系の資格の中でも職務内容の幅が非常に広いため、働く職場にも様々な形態があります。
その中でも、調剤薬局は薬剤師の職場の中でも薬剤師たる仕事が多く、メインの就職先といえますので、調剤薬局で働くことに興味のある人も多いでしょう。
調剤薬局は募集が多く、薬剤師不足が叫ばれている状況の中、転職の難易度自体は低く、比較的転職しやすくはなっています。求人の数が非常に多いため、自分の希望、条件にあった調剤薬局を探しだす必要はあります。 今回は、調剤薬局に関してメリット、デメリットを見て行き、条件にあった職場を見つけることが出来るように解説していきます。
薬局で働くメリットとしては、一つは残業が比較的少なく業務時間がしっかり決められていることです。薬局にもよりますが、門前薬局であれば完全週休2日制で残業はなしということも珍しくありません。 病院薬剤師や開発研究職と比べて、薬局の勤務内容もそこまで忙しくないことが多いため、プライベートを確保しながら働き続けることも可能です。
マイナビ薬剤師のアンケート調査によれば、平均残業時間は10時間を切っており、定時で仕事が終わることが多いのがわかります。しかし、あくまで平均値ではありますし、地域、店舗によって傾向は多少変わりますので、事前に聞いておくことが重要です。
ある程度の規模の調剤薬局であれば、全国各地にいくつも支店を構えているので、薬剤師さんの希望する職場に勤務できるよう取り計らってもらえます。転職先としてはもちろん、一旦転職して薬局に就職したとしも肌が合わないと感じれば、さらに異動をすることが可能です。
そして転勤をする際に地方を希望した場合は、都会の調剤薬局よりも年収が高くなる傾向が挙げられます。一般的なサラリーマンの場合、通常は東京や大阪といった都心の職場である方が平均年収は高くなる傾向があるのですが、調剤薬局の場合、全国に必要であるにもかかわらず地方では薬剤師不足のため需要が高く、そのため平均賃金が高くなる傾向があるのです。
薬キャリの調査によれば、平均年収が高い県は、岩手県、茨城県、山口県、鳥取県、三重県などより地方に行くほど高待遇で迎えられていることがわかります。そして同じ調剤を行う薬剤師でも、病院薬剤師より平均して初任給が高い傾向があります。新卒の薬剤師さんにとっては大きな魅力とも言えるでしょう。
逆にデメリットとしては、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。
調剤薬局という業務形態は、病院などと比べてどうしても小規模になってしまいます。少人数で構成されている職場が多いために、どうしても人間関係が密になりすぎてしまうことも苦手な人にはデメリットになりえます。
薬局によっては数人の単位で経営されていることも多く、人間関係でうまくいかなくなると、途端に働きにくくなってしまうためです。
また、薬価改定の影響で統廃合が進んでいるため安定感という意味では、少し不安が残るのも事実です。 単独の調剤薬局だけでなく、大手のドラッグストアも経営拡大のために調剤薬局を併設する企業も多いので、より過渡競争になってしまい、最悪の場合、薬局事態の経営が立ち行かなくなる可能性もあります。
この辺りは公立病院などは経営が自治体ベースで成り立っていますので安定していると言えるでしょう。
これは捉え方にもよりますが、仕事がルーチンワーク化してしまうということでしょう。どうしても病院薬剤師などと比較すると単純作業の繰り返しの部分も多く、勉強やスキルアップのための向上心が強い薬剤師さんにとっては物足らない部分も感じてしまうかもしれません。
また、薬剤師業界自体が女性が多い業界ではありますが、その中でも調剤薬局は女性が多い職場ですので、男性にとっては職場でその環境に馴染めるかどうかも大きな生涯になるかもしれません。
そして何と言っても、患者さんとの関係が非常に問われる職場なので信頼関係の構築にストレスがかかってしまう場合もあります。
例えば、近年スタンダードのなりつつあるジェネリック医薬品への転換に関しても、ジェネリック医薬品を勧めたとしても患者さんにその効果や安全性について理解していただく必要があります。
そして2016年の診療報酬改定で、一部の薬局ではお薬手帳を持参した方が薬剤服用歴管理指導料を低く出来るようになり、お薬手帳が患者さんにとっても医療機関にとっても必須と言えます。
しかし、お薬手帳をしっかり管理していただけるように説明するのも、相手が御年寄であったり、面倒くさがる患者さん相手では一苦労です。お薬に対するクレームも直接、調剤薬局に届きますし、患者さんの対応にストレスを感じてしまう場合も多いでしょう。
これまで説明してきたように、薬局で働くのはメリットもあればデメリットもあり、自分がどのような考え方で、どんなタイプの薬剤師なのかがポイントになってきます。調剤薬局への転職が向いている薬剤師さんは、一つは病院薬剤師や研究開発職で働くのが体力的にも内容的にもハードであると感じている人です。
病院薬剤師や研究開発職はやりがいもありますが、業務時間が長かったり、プライベートを割いて勉強会などに出席しないといけなかったり、負担が大きいと感じる人には薬局はむいていると言えます。また、出産や育児に時間を当てたいと考える子育て世代の女性薬剤師さんにとっては、時間に都合のつく調剤薬局での仕事は魅力的と言えるでしょう。
そして、前述の通り一般企業と違って地方の方がより高待遇を得ることが出来るわけですから、田舎暮らしや地方での生活に不満がない人にとっては非常に魅力的な職場環境と言えるでしょう。薬局での職場におけるデメリットと言える職場環境が狭い、人間関係が密といった部分も、もともと人とコミュニケーションを取るのが好きな人や、人間関係を円滑にするのが得意な方にとっては非常に働きやすい職場と言えます。
あるいは、転職の事前に職場見学をすることで、その職場の人間関係や、自分が働きたいと思える雰囲気かどうかも、ある程度判断することが可能ですし、転職サイトのエージェントに詳しい内部事情を聞いておくのも良いでしょう。 それから、何と言っても将来的に、いつかは自分の薬局を持ちたい、独立開業したいという願望のある方にはお勧めです。
調剤薬局は薬剤師が独立開業するには最も成功しやすい業務形態ですし、実際に薬局に勤めてみることで、開業した時のイメージが湧きます。早ければ30代で開業できますし、薬局で働きながら開業資金を貯めたり、企業によってはフランチャイズ制度を設けている薬局もありますので、そういった制度を利用して開業するチャンスもあります。
しかしここで注意が必要なのが、企業によってはフランチャイズ制度を設けていることを謳い文句に、開業志望の薬剤師を募集しているものの、実際には独立開業は困難な薬局もあります。その辺りは事前にしっかり調べて、入社してから実際にフランチャイズで独立した例があるかどうかは、検証しておく必要があるでしょう。
今回は、薬局への転職の際のメリット、デメリットを中心に、転職のポイントをまとめてきました。調剤薬局は薬剤師の主たる職場で全国各地に数多くあり、募集要件も本当に様々な条件があります。ですので、薬局への転職を考えるときは、自分の目的を明確にすることが重要です。
自分が何を優先して、何を諦めるかをしっかり把握することで、より最適な職場を選択することが可能になってきます。条件だけではなく、実際に職場を見学して肌で感じることも必要です。今回の記事を参考にしていただき、自分の働きたいスタイルにあった職場を選択するようにしましょう。