MRへの転職を考えているけれど、成功するのは難しいかもと尻込みしていませんか?MRは自社の医薬品情報のほかに、幅広い知識やスキルが求められ、確かに成功するのは簡単ではありません。最近はインターネットで情報を得る医師が増え、MRの数は減る傾向にあります。それでも、信頼できるMRからなら直接情報を受けとりたいと考えている医師はたくさんいます。さらに最近は、女性のMRが増える傾向にあり、女性薬剤師にとっては高収入を得るチャンスが広がっているのです。
MRは、Medical Representativeの略で、製薬メーカーの医薬品情報担当のことです。 主な業務は、病院や診療機関を訪問し、自社の医薬品に関する情報を医師や歯科医師、薬剤師、看護師などに提供して、医薬品の採用と適正な使用につなげることです。 情報提供を通して、医薬品の販売に結びつけるとともに、医療に貢献するという社会的に意義のある仕事です。
提供する医薬品情報は、どういった疾患を対象にしているのか、薬効はどのようなものか、他の製品と比べてどのような点が優れているのか、その医薬品を使用するメリットなどです。 特に薬の相互作用、副作用は患者の容体や生命に関わるので、医療機関や医師との間に信頼関係を築いてしっかりと情報提供します。さらに、その医薬品を使用している医療機関や医師からフィードバックを受け、それを自社に的確に伝えることもMRの役目です。 努力が実り、自社の医薬品が採択されると、納品のために出入りの卸業者と価格の折衝をするのもMRの仕事に含まれます。
MRになるためには特に資格は必要ありませんが、医療情報の提供という社会的責任の大きい業務を担っていることから、認定制度の必要性が叫ばれ、1997年にMR認定試験制度がスタートし、1回目の試験が行われました。 現在の試験科目は「医薬品情報」、「疾病と治療」、「MR総論」で、薬剤師が受験する場合は、「医薬品情報」と「疾病と治療」が免除されます。
MR認定センターが、登録している製薬メーカーや薬品卸業者、210社に行ったアンケートによると、2018年3月末時点のMRの総数は62,433名で、前年の調査から752名減少しました。性別は男性が53,185名、女性が9,248名で、女性比率15パーセントと、男性優位の職業となっています。しかし、前年度に比べると、男性のMRは1,000名減少しましたが、女性は248名増え、女性の進出が目立つ結果となっています。MR認定取得者は60,926名とMR全体の98パーセントが認定を取得しています。 MRにおける薬剤師の資格保持者は5,825名で、全体の9.3パーセントにあたります。
ある転職エージェントの調べによるとMRの平均年収は、男性749万円、女性549万円となっています。年代別に見ると20代の若手で400万円から600万円、中堅の30代で600万円から800万円、ベテランの40代で800万円から1,000万円で、40代の半数以上が1,000万円を超えています。 このようにMRのメリットは、なんといっても収入が高いことです。
病院や調剤薬局、ドラッグストアと比べて高いのはもちろん、製薬メーカーの他の職種と比較しても高いといえます。さらに、土日、祝祭日は基本的に休みで、有給休暇も取りやすく、 厚生年金や健康保険、育休・介護休業などもしっかりしています。医薬品に関する知識だけでなく、プレゼン力、コミュニケーション力、交渉力などのビジネススキルが身につく点も魅力といえるでしょう。
MRのデメリットは、自社製品の知識が中心になるため、薬剤師の専門性を十分に生かせない面があることです。さらに、営業職なので達成すべき数値目標がありプレッシャーを感じる人も多いでしょう。同時に、プレゼンやコミュニケーション、交渉などの対人スキルが弱い人はストレスが多い仕事になります。
そのほか、社内の会議や書類作成などがあり、デスクワークや書類作成ソフトに慣れていない人には苦痛かもしれません。加えて転勤があるため、引っ越しや単身赴任によって、本人だけでなく家族も含めて生活環境の変化に苦労する可能性があります。最後に、長期間MRを続けると、病院や調剤薬局への転職が難しくなる点もデメリットといえそうです。
薬剤師がMRになるためには、まず自分に適性があるかを見極めることが大切です。たとえば、外交的な性格かどうかという点です。統計によるとMRは月に平均して124人の医師、38人の薬剤師を訪問します。継続的に訪問して、コミュニケーションを取り続けられる積極性が必要なのです。さらに売上目標達成へのモチベーションが高いかどうか、プレゼンや交渉が苦にならないかなどもチェックしましょう。
MR認定センターの調査では、医師がMRに求める資質として、「人柄、丁寧さ、熱心さなどを含むマナー、人間的な信頼性」、「薬剤の長所だけでなく短所も説明するなど、中立的に情報を提供」、「エビデンスを含む、自社医薬品の学術的な知識の広さ・深さ」などが挙げられています。つまり、ビジネスマナーや仕事への熱意、会話力、対人能力、製品知識、正確な情報収集力、論理的思考力、プレゼン力、対応スピードなどが重要になってくるということです。
同じ調査で、今後のMR環境の変化について問う質問では、「プライマリ医療に関する薬剤情報の提供」、「オンコロジー」、「抗体医療など高い専門性の情報提供」、「特定領域に関する知識の提供」を求める声が挙がっています。 ですから、医師や医療機関が求める情報を的確に把握し、常に新しいことを学ぶ姿勢も要求されます。
最近では、インターネットを利用した医薬品情報、あるいは最新の文献や研究成果をその分野で名の知れた医師が解説するサービスなどが登場し、MRの役割は減る傾向にあるといわれます。それでも、全ての医師がタイミングよくインターネットに接続しているわけではなく、こうした情報を常にチェックしているわけではありません。したがってMRが勉強を重ね、医師からの信頼を得たうえで、然るべきタイミングで情報提供することはまだまだ必要なのです。
未経験でMRになれるか不安視する向きもあるでしょう。しかし、20代なら採用される可能性は十分にあります。最近は派遣のMRも増えており、MR専業の派遣事業者はMR認定に向けて研修制度を整えているので、まずはそうした業者に登録するのも一案です。派遣事業者でMRとして経験を積んで、製薬メーカーの正社員にチャレンジするというキャリアアップが考えられます。 変則的なパターンとしては、病院薬剤師希望の人が病院の求人が少ないため、MRで仕事をしながらチャンスを待つというケースもあるようです。
MRは自社の医薬品の情報提供と、それらを使用している医師や薬剤師からの意見を社内にフィードバックしながら、薬の適正使用を推進する社会的にも重要な意味を持つ仕事です。収入も高く、福利厚生もきっちりとしている企業が多いので、信頼されるMRになれば安定して働くことができます。
未経験からでも転職できるチャンスもありますし、女性の活躍も進みつつあります。新薬の情報や新しいテクノロジーなどを常に学び続けて、信頼を勝ち取れば成功を引き寄せられます。