一口に応急処置といっても外傷性のものや疾患性のものなどさまざま。とはいえ深刻な状態からの蘇生率や予後などを左右するのは、やはり酸素です。特に脳に酸素が送られない時間を少しでも縮めることが応急処置のポイントになります。
傷病者のバイタルサイン(呼吸数、脈拍数、血圧、意識状態の他、体温等が含まれる場合もある)をチェックし、呼吸がない、脈が触れない、または不整の時はすぐに胸骨圧迫をはじめましょう。骨折や切り傷、火傷など原因が明らかで、意識がはっきりしている場合でも、正常な呼吸が出来ているかこまめな確認が必要です。
また、近年では蘇生率に大きな差がない可能性や感染防止の観点から、口対口の人工呼吸は無理に行わずともよいという考え方があります。弁つきポケットマスクなどが用意できず、感染の危険があるときは胸骨圧迫を重点的に行いましょう。
火事場の馬鹿力とは言いますが、知識や判断力が必要な行動は平常時よりも力が発揮できないもの。普段からイメージトレーニングを繰り返し行っておくことが効果的です。
例えば、バスの乗車中。運転手さんが走行中に意識を失ってしまうニュースが時々報道されますよね。今乗っているバスでそうなったとき、どうするか具体的に考えてみましょう。まず、バスを安全に止めなければなりません。これと同時に運転手さんの状態を確認し、処置をする必要もあります。
誰に協力を要請するか、他にも医療従事者はいるのか、など。色々なパターンでシミュレーションしてみると良いでしょう。また、普段からよく利用するお店や、道などでどこにAEDが設置されているかを調べておく必要がありそうです。
一般的な応急処置を行いながら、もしまだ余裕があれば薬剤師ならではの情報収集もしたいところ。例えば、急病者がたまたまお薬手帳を持っていた!などというケースでこれを活用しない手はありません。普段の受診状況や既往歴、服用歴、アレルギーの有無など様々な情報を知ることができます。
糖尿病の治療中であれば低血糖を疑うことができますし、ブドウ糖を与えるなどの対処も考えられます。治療域の狭い医薬品を使用していれば、コントロール不良による副作用を疑うこともできます。薬剤師ならではの視点でおかしいと思うことは、他の医療スタッフには気付けないポイントかもしれません。自信を持って積極的に伝えたいですね。
もし事故や急病の場面、あるいは災害にあってしまったら、普段医療に従事していなくとも、薬剤師として咄嗟に対応したいもの。大学で習っただけでは不十分です。薬剤師向け救急医療の書籍もいくつか発売されていますので、対応に自信のない人は読んでみてはいかがですか?
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |