一度現場を離れ、数年後に復帰するのは女性薬剤師にとってめずらしいことではありませんよね。もし再就職するとしたらどんなことを重視して探しますか?どんな条件にしろ、予想より良ければ嬉しいのですが、実際そうなるとは限りません。今回は予想と現実でズレやすい再就職先での就業環境についてまとめてみました。
2013年、離職後病院に再就職した女性看護師を対象に調査(鈴木ら, 日本看護研究学会雑誌, 2018, 41(4), 753)が行われました。対象は看護師ですが、薬剤師、特に病院勤務を考えている方にも十分参考になる資料です。
この調査では、労働環境や人間関係などいくつかの項目で就職前の予想と実際にどうだったか、また再就職後の満足感についてまとめられています。中でも現実が悪い意味でズレる、つまり期待はずれになりやすい項目は就業後の教育体制についてでした。
雇用者は即戦力としての人材を募集していますが、労働者としては久しぶりの勤務でしっかりと教育してもらいたいと考えがち。双方の考え方のズレが期待はずれになる原因のようです。教えて貰えるもの、と決めてかからずに自ら進んで行動することで解決できそうですね。
予想と現実のズレ具合は、再就職前にどのような情報源から情報を得ていたかにも左右されるようです。情報源としては、求人情報や担当者による説明などによる外向けの情報と、インターンシップや実習などに参加して得られる内部の情報に分けられます。
例えば外部向けの情報のみで再就職した場合、人間関係、特にどのような指導を受けられるかについては期待はずれになるケースが多くみられました。これに対し内部の情報を得ていた人では、職場内の雰囲気も含めて予想通りになることがわかっています。
休みの取りやすさや超過勤務の時間など、労働環境については情報源による違いはあまりないようです。そのため労働環境のみを重視するのであれば求人情報だけでもかまいませんが、人間関係が気になる場合はやはり、就業前に見学や実習をさせてもらうのが良いでしょう。
他に興味深い結果もありました。どうやら「期待はずれ」だと必ずしも職場への不満が大きくなるかといえば、一概にそうではないようなのです。例えば、「理想的なケアが行える」や「ケア改善のために意見交換ができる」の項目が期待はずれのほうが、仕事への満足感が強くなりました。
復帰後仕事についていけるか、という不安は多くの人が抱える悩みですよね。しかし再就職先でケアや意見交換の場が「理想的」ではないと、まだ改善の余地がある→自分の力で改善出来るかもしれない、と不安が軽減されるようです。
自分のスキルや知識を活かしたいと強く思う場合、完璧で確立された環境の職場よりも、未発達な職場のほうが向いているかもしれません。新卒就活時の大企業か、中小企業か、の選択と似ていますね。
理想や予想と現実がズレることはよくあります。しかしどういった部分がズレやすいのかを把握しておくと、再就職先の絞り込みに役立つはず。また、失敗のない再就職を目指すなら、面倒臭がらずに見学や、可能であれば就業体験などをさせてもらいましょう。
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ちゃちゃ 薬剤師。大学で研究をしながら週末はドラッグストアで勤務。見聞を広めるため医療系ライターとしても活動中。 |